2016-06-05(Sun)
CHOCOLATE SOLDIERS 10 - Valentine's Day 2016 -
こんにちは、ももこです。
バレンタインSS第10話、前半のみですがUPします。
……ていうか、これ前半後半で間に合うのかな(^_^;)
余りに長かったらもう一話分追加かもです…ごめんなさい(>_<)
今回、前回のクラウド問題発言に言及直前で区切ってます。
多分、皆様が気になる本題は後半になると思います。
ティファの心情も表現弱いところあると思うので、後半書くついでに前半も見直したいと思います(^_^;)
今の連休中にUP出来るように頑張ります(*・`ω´・)ゞ
今日は朝から咳が酷く病院行ってクスリ貰ってきたんですが……解熱のお薬くれなかった……熱は自力で何とかしろという事ですか(´;ω;`)??
それではまた来ますね!
拍手&閲覧ありがとうございました(*^_^*)
【Warning!】バレンタインSS10話です。DC後設定のティファ視点。最初から最後までティファ泣きっぱなしです(汗)今回は前半のみUP、クラウド問題発言については後半で本人から詳しく語って頂きます(*・`ω´・)ゞクラエア要素有りますので苦手な方はご注意下さい。続きます。6月14日後半UPしました。
『ねえ、ティファ。あなたに一つだけ、お願いがあるの。わたしの我が儘、きいてくれるかな?』
春の陽だまりのようなその場所で、貴女は旅の間良く見せたその愛らしい仕草で私に語りかけた。
───そんなの……もちろんだよ。
胸を締め付けるような切なさに、溢れる涙を堪え返せば、途端に花のような笑顔を見せる貴女。
良かった、と、華奢な身体一杯に私を抱き締めてくれた。
『あなたにしか、出来ないの』
柔らかな抱擁の中、そう言って。
『ティファ。いつか話した、わたしの願い。覚えてる?』
───あなたの……願い?
腕に抱かれたまま返す私に貴女は、それを私が教えたカクテルの名前と共に耳元でそっと囁いた。
『どうか、一度だけ叶えさせて』
抱擁を解き、見つめる私の涙を優しく拭う。
『あなたと一緒に……この気持ち、彼に伝えたい』
───うんっ……うん、分かった……エアリス……!!
拭った先から溢れて止まらなくなった涙に、困った子ね、と微笑みながら髪を結ぶリボンを解いて私の左手を取る貴女。
きゅっと、小指の付け根に柔らかく結ばれた桃色の裾がふわりと舞う。
それを愛おしそうに見つめて、ふっと微笑う翡翠の煌き。
柔らかに絡まる、二人の小指の先。
『二人だけの、約束、ね』
軽やかに片眼を弾きながら、貴女は輝く陽だまりの中へとけていった。
CHOCOLATE SOLDIERS 10
クラウドの口からはっきりと聞いたのは、これが初めてかもしれない。
「俺は……、エアリスが、好きだったよ」
その瞬間、頭の奥がジンと痺れた。
呼吸も、心臓でさえも。
私の全ての時間がその一拍に動きを止めた。
見開いたまま、閉じられない瞼。
彼から落とされる直接の言葉───ショックだった。
彼を愛する、一人の女として。
………でも。
───ああ、やっぱり。
そんな風に、どこか冷静に納得している自分もいた。
私へ向けられる彼の気持ちは信じてる。
でも───もし。
もし、エアリスが私達と共に、今もこの世界で微笑んでいたのなら。
(エアリス……)
記憶の中の、彼女の笑顔が甦る。
その笑顔の隣にある、穏やかな彼の眼差しと共に。
(クラウド……)
彼の気持ちは……本当は彼女にこそ向けられるべきものだった……?
今、こうしてクラウドの腕に抱かれているのは………本当は、私ではなく───………。
「……そっ…か……」
彼の肩に顔を伏せたまま、やっと声を絞り出す。
掠れたそれは、少し震えていた。
視界が、だんだんとぼやけてくる。
熱い水がその縁で球を作り、溢れ出そうとしている。
───クラウドとエアリス。
本当は、ずっと前から"そうかもしれない"って……思ってた。
……だけど、これではっきりした。
「っ」
不意に、固まったままの身体から力が抜けた。
「…!」
沈み込む身体に反応して、支える彼の腕に力が籠る。
しっかりと抱きとめられたまま、けれどお互いの表情はまだ見せない……見せられない。
背を丸めたまま、ぎゅっと彼の肩に目元を埋める。
瞼の表面がじんわりと温かいものに濡れていく。
自分の中で、たくさんの感情がぐちゃぐちゃに混ざり合い、弾ける。
二人への深い想い、憧憬、憐憫、嫉妬……そして罪悪感。
玉虫色のそれらの感情が、出口を求めて身体の中をぐるぐる回る。
「ティファ」
呼ぶ声と共に、彼の鼻先が髪に触れる。
「……ごめんなさい…もう少しだけ……このままでいさせて……」
「……、………」
感情の整理が追い付かないまま、今、あなたに向ける顔なんて作れない。
だからお願い、もう少しだけ待って。
願いを指先に乗せ、彼の服をきゅうっと握った。
伏せる頭の上、小さく漏らされる吐息が髪を揺らす。
「……、……」
それから数秒───躊躇うように、もう一度ゆっくりと動き出す大きな掌。
いつか、パパにしてもらったような優しい手つきで柔らかに髪を梳く。
けれど、その優しさが、今は胸の奥に小さな痛みを走らせる。
「………」
「………」
それから、しばらく。
お互いの息遣いとピアノの旋律、時計の秒針だけが音を刻む。
そして、彼の腕の中、大分気持ちも落ち着いてきた。
掌をその肩に、ゆっくりと顔を起こす。
「…ティファ?」
クラウドが呼ぶ。
「……うん」
それに小さく頷いて答えると、指先が頬に触れた。
こっちを向いてと促すように、彼のそれが肌を滑る。
瞬き一つ、顔を上げた。
目線の先、交わるのは、力強い光を湛えたサファイアブルー。
その真ん中に映るのは、泣き腫らした女の顔。
それはお世辞にも、好きな人に見せられるものではなかったけれど。
それでも、真っ直ぐに私を見つめてくれるあなたの瞳は、とても綺麗だと思った。
───ああ、やっぱり好きだな。
心から想う。
どんな彼でも……やっぱり私はクラウドが好き。
エアリスも好き。
二人とも、大好き……二人とも、愛してる。
だから、もう、泣くのは止めよう。
そして、"彼女の願い"を叶えよう。
「クラウド」
彼の肩に手を置き、腰を抱かれながら、カウンターの上に置かれたグラスに指を滑らせた。
その先を、碧い瞳が追う。
「エアリスからあなたへ」
彼女の代わりに、もう一度彼に贈る。
「受け取ってくれる?」
指を離し、微笑んで彼を見た。
一連の流れを追っていた彼の瞳は、じっとそこに向けられていた。
「……なあ、ティファ」
ゆっくりと彼が動き、目線が交わる。
静かな、けれど力強い眼差しが再び私を捉えた。
海の色に泳ぐ私は、やっぱり少しだけ泣いていた。
「なに?」
折った指の先で目元を拭う。
離れたそれが元の位置に戻る頃、彼の唇がゆっくりと開かれた。
「ティファは……俺の事、どう思ってる?」
「え…?」
彼の言葉に、知れず心臓がどくりと跳ねる。
咄嗟に片手を胸の上に置き、その鼓動を抑えながら彼を見た。
(クラウド…?)
表情こそ変わらないけれど、その眼差しは柔らかく、包み込むような温かさを滲ませている。
「え…っと……」
彼の言葉の真意を掴めないまま、向けられる穏やかさに戸惑う。
「クラウド…?」
困惑に声を揺らし彼を見れば、同じように彼も眉を下げ、困ったような笑みを浮かべた。
「別に難しく考える事は無いんだ。ただ……」
「………」
「ティファは俺の事、どう思っているのか確かめたくなった」
直接的なクラウドの言葉に思わず顔が熱くなる。
真っ直ぐに向けられるその眼差しも相まって、まともに彼の顔を見られなくなる。
それでも、その先にある答えを聞くまでは外さないだろう彼特有の拘束は、嫌と言う程知っている。
「ティファ?」
「……………好き」
殊更優しい声音で促され、やっとその一言を口にすれば、その口角にまた新たな弧が描かれた。
「…んっ」
彼の唇が濡れた頬に触れる。
竦めた肩を抱かれ、そのまま不安定な姿勢を抱き直されて、完全に彼の膝の上に身体が座った。
「ク、クラウド」
「ん」
幾分高くなった目線の先で、満足そうに微笑う彼を見る。
「ね、ねえ。これじゃ飲みにくいよ…」
「大丈夫。片手で飲める」
「そうじゃなくて私が……」
空いた片手でグラスを持ち上げるふりをするクラウドに、恥ずかしさも相まってそうじゃないと身体を揺らして抗議する。
「ティファ。危ないからじっとしてくれ」
「もうっ」
膝の上で不安定になる重心を支えるクラウドの溜め息が上がる。
それに釈然としないながらも、しょうがなく大人しく彼の首に片腕を廻して身体を預けた。
目線のすぐ下には可笑しそうにくつくつと声を抑えるクラウド。
それを黙って見ていると、不意にその表情が変化した。
静かに見上げるその先で私を映す、碧い瞳が瞬いた。
「なあ、ティファ」
「何?」
「マリンの事、好きか?」
突然、娘の名前を口にする彼。
「え…マリン?」
「答えてくれ。ティファにとって、マリンは?」
「もちろん……好きよ?」
返す言葉に彼が頷く。
「じゃあデンゼルは?」
「同じよ。好き。とても素直で良い子だと思ってるわ。だけど…何?何かの謎かけ?」
問いかけに首を傾げる私に、クラウドはただ静かに口角を上げるだけで。
それからまた同じようなやり取りが何度か続いた。
「仲間は?ユフィやバレット、他の皆」
「…皆同じだわ。好き」
「父さんと母さん……村の人達」
「……好き」
クラウドの言葉に返す私の答えはどれも同じ。
仲間や友人、家族は誰もが皆、私にとってかけがえのない大切な人達だもの。
そして………。
「エアリス」
「───……っ」
彼女の名前に、胸が震えた。
胸の中心に手を当て、彼女の姿を今一度想う。
「好き……っ!」
「…ティファ」
吐息のようなクラウドの声が、ふわりと頬に掛かる。
「クラウド…」
見つめるその先、緩やかに弧を描く彼の唇。
碧い瞳が微笑んだ。
「俺も……同じだ」
Next...
バレンタインSS第10話
……ていうか、これ前半後半で間に合うのかな(^_^;)
余りに長かったらもう一話分追加かもです…ごめんなさい(>_<)
多分、皆様が気になる本題は後半になると思います。
ティファの心情も表現弱いところあると思うので、後半書くついでに前半も見直したいと思います(^_^;)
今の連休中にUP出来るように頑張ります(*・`ω´・)ゞ
今日は朝から咳が酷く病院行ってクスリ貰ってきたんですが……解熱のお薬くれなかった……熱は自力で何とかしろという事ですか(´;ω;`)??
それではまた来ますね!
拍手&閲覧ありがとうございました(*^_^*)
【Warning!】バレンタインSS10話です。DC後設定のティファ視点。最初から最後までティファ泣きっぱなしです(汗)
『ねえ、ティファ。あなたに一つだけ、お願いがあるの。わたしの我が儘、きいてくれるかな?』
春の陽だまりのようなその場所で、貴女は旅の間良く見せたその愛らしい仕草で私に語りかけた。
───そんなの……もちろんだよ。
胸を締め付けるような切なさに、溢れる涙を堪え返せば、途端に花のような笑顔を見せる貴女。
良かった、と、華奢な身体一杯に私を抱き締めてくれた。
『あなたにしか、出来ないの』
柔らかな抱擁の中、そう言って。
『ティファ。いつか話した、わたしの願い。覚えてる?』
───あなたの……願い?
腕に抱かれたまま返す私に貴女は、それを私が教えたカクテルの名前と共に耳元でそっと囁いた。
『どうか、一度だけ叶えさせて』
抱擁を解き、見つめる私の涙を優しく拭う。
『あなたと一緒に……この気持ち、彼に伝えたい』
───うんっ……うん、分かった……エアリス……!!
拭った先から溢れて止まらなくなった涙に、困った子ね、と微笑みながら髪を結ぶリボンを解いて私の左手を取る貴女。
きゅっと、小指の付け根に柔らかく結ばれた桃色の裾がふわりと舞う。
それを愛おしそうに見つめて、ふっと微笑う翡翠の煌き。
柔らかに絡まる、二人の小指の先。
『二人だけの、約束、ね』
軽やかに片眼を弾きながら、貴女は輝く陽だまりの中へとけていった。
CHOCOLATE SOLDIERS 10
クラウドの口からはっきりと聞いたのは、これが初めてかもしれない。
「俺は……、エアリスが、好きだったよ」
その瞬間、頭の奥がジンと痺れた。
呼吸も、心臓でさえも。
私の全ての時間がその一拍に動きを止めた。
見開いたまま、閉じられない瞼。
彼から落とされる直接の言葉───ショックだった。
彼を愛する、一人の女として。
………でも。
───ああ、やっぱり。
そんな風に、どこか冷静に納得している自分もいた。
私へ向けられる彼の気持ちは信じてる。
でも───もし。
もし、エアリスが私達と共に、今もこの世界で微笑んでいたのなら。
(エアリス……)
記憶の中の、彼女の笑顔が甦る。
その笑顔の隣にある、穏やかな彼の眼差しと共に。
(クラウド……)
彼の気持ちは……本当は彼女にこそ向けられるべきものだった……?
今、こうしてクラウドの腕に抱かれているのは………本当は、私ではなく───………。
「……そっ…か……」
彼の肩に顔を伏せたまま、やっと声を絞り出す。
掠れたそれは、少し震えていた。
視界が、だんだんとぼやけてくる。
熱い水がその縁で球を作り、溢れ出そうとしている。
───クラウドとエアリス。
本当は、ずっと前から"そうかもしれない"って……思ってた。
……だけど、これではっきりした。
「っ」
不意に、固まったままの身体から力が抜けた。
「…!」
沈み込む身体に反応して、支える彼の腕に力が籠る。
しっかりと抱きとめられたまま、けれどお互いの表情はまだ見せない……見せられない。
背を丸めたまま、ぎゅっと彼の肩に目元を埋める。
瞼の表面がじんわりと温かいものに濡れていく。
自分の中で、たくさんの感情がぐちゃぐちゃに混ざり合い、弾ける。
二人への深い想い、憧憬、憐憫、嫉妬……そして罪悪感。
玉虫色のそれらの感情が、出口を求めて身体の中をぐるぐる回る。
「ティファ」
呼ぶ声と共に、彼の鼻先が髪に触れる。
「……ごめんなさい…もう少しだけ……このままでいさせて……」
「……、………」
感情の整理が追い付かないまま、今、あなたに向ける顔なんて作れない。
だからお願い、もう少しだけ待って。
願いを指先に乗せ、彼の服をきゅうっと握った。
伏せる頭の上、小さく漏らされる吐息が髪を揺らす。
「……、……」
それから数秒───躊躇うように、もう一度ゆっくりと動き出す大きな掌。
いつか、パパにしてもらったような優しい手つきで柔らかに髪を梳く。
けれど、その優しさが、今は胸の奥に小さな痛みを走らせる。
「………」
「………」
それから、しばらく。
お互いの息遣いとピアノの旋律、時計の秒針だけが音を刻む。
そして、彼の腕の中、大分気持ちも落ち着いてきた。
掌をその肩に、ゆっくりと顔を起こす。
「…ティファ?」
クラウドが呼ぶ。
「……うん」
それに小さく頷いて答えると、指先が頬に触れた。
こっちを向いてと促すように、彼のそれが肌を滑る。
瞬き一つ、顔を上げた。
目線の先、交わるのは、力強い光を湛えたサファイアブルー。
その真ん中に映るのは、泣き腫らした女の顔。
それはお世辞にも、好きな人に見せられるものではなかったけれど。
それでも、真っ直ぐに私を見つめてくれるあなたの瞳は、とても綺麗だと思った。
───ああ、やっぱり好きだな。
心から想う。
どんな彼でも……やっぱり私はクラウドが好き。
エアリスも好き。
二人とも、大好き……二人とも、愛してる。
だから、もう、泣くのは止めよう。
そして、"彼女の願い"を叶えよう。
「クラウド」
彼の肩に手を置き、腰を抱かれながら、カウンターの上に置かれたグラスに指を滑らせた。
その先を、碧い瞳が追う。
「エアリスからあなたへ」
彼女の代わりに、もう一度彼に贈る。
「受け取ってくれる?」
指を離し、微笑んで彼を見た。
一連の流れを追っていた彼の瞳は、じっとそこに向けられていた。
「……なあ、ティファ」
ゆっくりと彼が動き、目線が交わる。
静かな、けれど力強い眼差しが再び私を捉えた。
海の色に泳ぐ私は、やっぱり少しだけ泣いていた。
「なに?」
折った指の先で目元を拭う。
離れたそれが元の位置に戻る頃、彼の唇がゆっくりと開かれた。
「ティファは……俺の事、どう思ってる?」
「え…?」
彼の言葉に、知れず心臓がどくりと跳ねる。
咄嗟に片手を胸の上に置き、その鼓動を抑えながら彼を見た。
(クラウド…?)
表情こそ変わらないけれど、その眼差しは柔らかく、包み込むような温かさを滲ませている。
「え…っと……」
彼の言葉の真意を掴めないまま、向けられる穏やかさに戸惑う。
「クラウド…?」
困惑に声を揺らし彼を見れば、同じように彼も眉を下げ、困ったような笑みを浮かべた。
「別に難しく考える事は無いんだ。ただ……」
「………」
「ティファは俺の事、どう思っているのか確かめたくなった」
直接的なクラウドの言葉に思わず顔が熱くなる。
真っ直ぐに向けられるその眼差しも相まって、まともに彼の顔を見られなくなる。
それでも、その先にある答えを聞くまでは外さないだろう彼特有の拘束は、嫌と言う程知っている。
「ティファ?」
「……………好き」
殊更優しい声音で促され、やっとその一言を口にすれば、その口角にまた新たな弧が描かれた。
「…んっ」
彼の唇が濡れた頬に触れる。
竦めた肩を抱かれ、そのまま不安定な姿勢を抱き直されて、完全に彼の膝の上に身体が座った。
「ク、クラウド」
「ん」
幾分高くなった目線の先で、満足そうに微笑う彼を見る。
「ね、ねえ。これじゃ飲みにくいよ…」
「大丈夫。片手で飲める」
「そうじゃなくて私が……」
空いた片手でグラスを持ち上げるふりをするクラウドに、恥ずかしさも相まってそうじゃないと身体を揺らして抗議する。
「ティファ。危ないからじっとしてくれ」
「もうっ」
膝の上で不安定になる重心を支えるクラウドの溜め息が上がる。
それに釈然としないながらも、しょうがなく大人しく彼の首に片腕を廻して身体を預けた。
目線のすぐ下には可笑しそうにくつくつと声を抑えるクラウド。
それを黙って見ていると、不意にその表情が変化した。
静かに見上げるその先で私を映す、碧い瞳が瞬いた。
「なあ、ティファ」
「何?」
「マリンの事、好きか?」
突然、娘の名前を口にする彼。
「え…マリン?」
「答えてくれ。ティファにとって、マリンは?」
「もちろん……好きよ?」
返す言葉に彼が頷く。
「じゃあデンゼルは?」
「同じよ。好き。とても素直で良い子だと思ってるわ。だけど…何?何かの謎かけ?」
問いかけに首を傾げる私に、クラウドはただ静かに口角を上げるだけで。
それからまた同じようなやり取りが何度か続いた。
「仲間は?ユフィやバレット、他の皆」
「…皆同じだわ。好き」
「父さんと母さん……村の人達」
「……好き」
クラウドの言葉に返す私の答えはどれも同じ。
仲間や友人、家族は誰もが皆、私にとってかけがえのない大切な人達だもの。
そして………。
「エアリス」
「───……っ」
彼女の名前に、胸が震えた。
胸の中心に手を当て、彼女の姿を今一度想う。
「好き……っ!」
「…ティファ」
吐息のようなクラウドの声が、ふわりと頬に掛かる。
「クラウド…」
見つめるその先、緩やかに弧を描く彼の唇。
碧い瞳が微笑んだ。
「俺も……同じだ」
Next...
