七つ星 -NANATSUBOSHI-

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SWEET DISTANCE 2 - Cloud Birthday 2016 -

こんにちは、ももこです。

遅くなりましたが、クラ誕SS2話をUPします。
今回もオールキャラでクラティ要素は薄目なんですが、後半はそれなりに雰囲気出したつもりです(^_^;)
このクラ誕は今までとは違って軽めのテイストでいきたいと思っているので、所々ギャグっぽい要素もありつつ少女漫画系のノリで、思春期真っ只中の"見た目は大人、頭脳は子供"なクラティで進めていきたいと思います(*^_^*)
さて、私の中では恋愛経験0の二人……お互いを意識しつつ、手探りで一歩一歩前に進んでいきます。
じれったいぞ、と感じるかもしれませんが、最後までお付き合い頂ければ嬉しいです(*^_^*)

それではまた来ますね!
拍手&閲覧ありがとうございました(*^_^*)

【Warning!】クラ誕SS2話です。クラウド視点。今回はオールキャラ、ギャグ要素あります。まだまだ遠い二人の距離、それでもお互いに意識し始める頃です。続きます。







SWEET DISTANCE 2





「……俺は幻想の世界の住人だった」

床に付けた足を踏み締め、自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
目線を下げ、瞼を閉じた。
そして、その裏側に思い描く。

一人のソルジャーの後ろ姿を。

光輝く木漏れ日を背に、仲間を従え悠々と歩く男。
金色の髪を持つそれがゆっくりと振り返る。

冷たい魔晄の瞳。
冷めた表情。
余裕ある口元。
圧倒的な存在感。

憧れだった、ソルジャー1st。

『何だ、お前』

感情の無い、聞き慣れた声。
たいして興味も無さそうに、眼の前の"俺"が問う。

───お前こそ、誰だ。

『俺か?俺はソルジャークラス1stのクラウドだ』

───……違う。

『……何だと?』

射竦められるような碧い眼差し。
力強く、他を寄せ付けない孤高のソルジャー。
それは時にかつての英雄の姿でもあり、掛け替えのない親友の姿でもあった。

───……っ。

幼い頃からずっと憧れていた理想の姿に、強い寂寥感が込み上げる。
例え、それが虚像であったとしても……一度手にしたそれを失う喪失感は、確かな波となって心を揺さぶる。
けれど、現実から眼を逸らさずに、今度こそ真正面から受け止め認めなければならない。

偽りの仮面で弱い心をひた隠しにしてきた、ちっぽけな人間。


今の自分こそが───"ニブルヘイムのクラウド・ストライフ"だと。



「……、……」

顔を上げ、しっかりと前を向いた。

「もう幻想はいらない……俺は俺の現実を生きる」

眼の前にいる仲間の一人一人に向けて───自分自身に向けて断言する。


そして、何より───。


「捻くれ者のクラウド君ね!」


弾けるような笑顔を見せる、彼女に向けて。



(………ごめん、ティファ)



………金髪のソルジャーは、もうどこにもいなかった。





「それじゃ今までと変わんねえぜ!」
「…!」

室内に大きく響き渡るバレットの声。
それに弾かれて顔を上げた。

「そりゃそうだ!」

それに被さるように、シドの賛同する声。
途端、眼の前にある幾つもの表情が一斉に崩れた。

「お前さんのその仏頂面と生意気さは生まれ持ってのモンだろ~がよ。なあ、ティファ」
「ケチでイヤミなとこもね~」
「……ふっ。お前もどうやら辛い立場だな」
「ふふっ、シドったら。ユフィも!ヴィンセントまで…」

いくつもの明るい揶揄に、ティファが腰に手を当てながら苦笑で返していく。
それから振り返って困ったような笑顔を見せた。

「…、……」

予想外の反応に、しばし呆然としながら立ち尽くす。

「クラウド、気にしちゃダメよ」
「あ、ああ…」

呆気に取られている俺に向けて、ティファが小さく溜め息を吐きながら、それでも口元の弧を深くして言う彼女の声はとても軽やかだった。
それにどんな顔をしていいのか分からずに言葉を濁していると、ティファの隣でナナキが尻尾をパタパタと楽しそうに靡かせながら……一言。

「そういうティファだって、さっきクラウドに"捻くれ者"って言ってたよ?」
「もうっ!ナナキっ!それは言わないの!」

ナナキの指摘にティファが頬を赤らめて否定する。

「そういえばそうでしたな~。ティファさん、一人だけ抜け駆けしようとしてもあきまへんで~」

それを聞いていたケット・シーが余計な茶々を入れて煽ろうとする。

「ケットも!」
「す、すんまへん~」
「クラウド、本当に気にしないでね!」
「……、ああ……」

モーグリの大きなぬいぐるみの首元を軽く皺が寄るほど(きつく?)掴み(締め上げ?)ながら顔を真っ赤にして必死に笑顔を作るティファ。
それに仲間達が可笑しそうに笑い合う声が響いた。


「……、……」

それを一人見つめながら、腹の底に溜めていた息をやっと吐き出した。
肩から力がすとんと落ちる。

───なんというか……拍子抜けした。

云わば彼等を騙していたとも取れる重大な告白をしたにも拘わらず、今までと変わらず笑顔で接してくれる仲間達。
目覚めてからこれまで胸に溜めていた緊張と相反する反応。
じわじわと静かに広がる安堵に、ずっと乗せていた強張りが解れていく。

(……皆……)

それと同時に、まだ心に引っかかっている思いが広がった。

(……いいのか?)


───このまま俺が一緒に行っても……赦されるのだろうか……?


確かに、肉体的にはジェノバ細胞によってソルジャーとほぼ同等だという自負はある。
本来の自分を取戻した今、皆の足手まといになるような事は無いと誓える。

それでも、今までソルジャーを謳っていた手前、結果的に皆の信頼を裏切ってしまったという思いが心の中にしこりとして残っていた。

(もし、赦されるなら………俺は───)


「………」

飛空艇の窓から覗く空を見上げる。

目覚める前には無かった、赤黒く禍々しい巨大な星───メテオ。
辺りに広がる澄んだ青空に落とされたその悪魔は、近い未来この星に甚大な被害を及ぼし破壊してしまうのだという。
地上を見れば、艶やかな緑が萌える大地を駆けるチョコボの群れと日々糧を紡ぐ人々の姿。
美しく弧を描く水平線には、漣(さざなみ)を悠々と追いかけるイルカの群れと幾つもの小さな漁船。
荒野に咲く小さな花々、豊かな大地に育まれた樹木、生き物達。
この星に懸命に生きる彼等がそこにはいる。
それらがあと数日で、全て失われてしまうかもしれない。

他でもない───この俺の過ちの所為で。


「…っ」

今更ながら、自分の犯した罪の大きさに眩暈がした。
押し寄せる失望と後悔。
けれど、それを上回る確かな決意が心に芽生えていた。


俺は、何としてもメテオを───セフィロスを止めなければならない。


この星を……皆の未来を失くさない為に。



「クラウド?」
「……ん」
「?」



………この笑顔を守る為に。





「ところでクラウドさん。これからどないするんですか?まさか、船から降りるなんて言わんといてや」

ひとしきり話が落ち着いた所で、ケット・シーが真面目な口調で俺を見た。
他の仲間達もそれに倣い、互いに話しを止めて一斉に向き直る。
幾つもの視線が再び自分に集中するのを腹を据えて受け止めた。

「クラウド……」

ティファが心配そうに俺を見つめる。
それに小さく頷いて、顔を上げた。

「……メテオが降って来ているのは俺の所為だ。だから俺に出来ることは何でもやるつもりなんだ」

自分の気持ちを伝えるように、仲間の一人一人に向かって視線を合わせた。

バレット、シド、ヴィンセント、ユフィ。

ナナキ、ケット・シー、ティファ。


それぞれに想いを込め、その胸の内に届けるように。

そして、皆の答えをじっと待った。



───一拍の後。

「おう!」

パン!と大きな音が鳴り響き、バレットの大きな拳が掌で弾けた。

「星を救う戦い、続けるんだな!」

真っ直ぐに俺を映す黒い双眼。
弾むように言いながら、厚い唇がぱっと大きく開き白い歯を覗かせる。
二つの瞳が大きな弧を描き、差し込む光を受けて輝いた。


"大丈夫だ"と───そう伝えるように。


「───、ああ!」

深くしっかりと頷き、瞳をぶつけてそれに応える。

「バレットが良く言ってただろ?」
「おう、アレだな!」

俺の意図にすぐに気付いたバレットが、向かいに佇むティファへと目配せをした。
一瞬、眼を瞬かせるティファ。
そしてすぐにその瞳を柔らかに変えた。

「なになに? わからないよ!」

そんな俺達の様子を眺めていたナナキが、待ち切れないとばかりに尻尾を忙しなく振った。
他の仲間達も黙ってはいるけれど、何かを期待するようにそれぞれの表情で俺達を見つめていた。

心の中一杯に、温かさが広がっていく。



(───皆、ありがとう……)



バレット、ティファ、そして俺。

三人同時に、大きく頷いた。



「俺達が乗った列車は途中下車は出来ないんだ!」

「私達が乗った列車は途中では降りられない!」

「オレ達が乗っちまった列車はよ! 途中下車は出来ねえぜ!」



その一瞬に、わあっと大きな歓声が上がった。
仲間達が笑顔で俺達三人を囲む。

「お、おい」
「きゃっ」
「だ~っ!お前ら、押すな!」
「良く言った!クラウド、それでこそ男ってぇモンだぜ!」
「ボク感動しましたわ~。クラウドさん達に付いてこ~思てます」
「えへへ、オイラも~」
「クラウドのくせに言うじゃん。ちょっとキャラ変わった?」
「……人は変われる……か。……ルクレツィア……」

押し寄せる笑顔の波に捉われるまま、バレット達と背中合わせになりながら数々の言葉を受け取った。
中には明らかに冷やかしの声も交じっていたけれど……それは今は甘んじて受け止めようと思う。
………ただし、許容範囲内でだ。

「ねえリーダー。褒めてあげたんだからユフィちゃんにマテリアちょーだい♪」
「調子に乗るな。それに褒めてないだろ」
「ふん!やーっぱケチは変わんないか~」
「……お前な……」

真正面からぐいぐいと物欲しそうに手を伸ばしてくる少女を身を捩って躱しながら後ずさる。
不意に、柔らかな感触が背中に伝わった。

「……っ」

ドキリとして振り向く。
途端、背中合わせになったティファと眼が合った。
驚いて目線を外す。

「あ…悪い」
「う、ううん」

背中とはいえ、思いがけず触れてしまった事に謝った。
すかさず、彼女も首を振って答える。
………心なしか頬が赤いのは気の所為だろうか。
思わず、じっとそこを横目で追ってしまう。

「良かったね」
「え?」
「良い仲間に巡り合えて」

背中合わせになったまま、ティファが抱き着いてくるナナキの頭を撫でながら嬉しそうにはにかんだ。
その笑顔に、心臓が小さく跳ねた。
慌てて目線を完全に彼女から外す。

「あ、ああ……まあ、な」

何とも照れ臭い気持ちになりながら、誤魔化すように鼻の頭を指先で軽く引っ掻きながら答える。

「ふふっ。これからもよろしくね。リーダーさん」

耳の向こうで、ティファの笑う声が聴こえた。

「………」




柔らかな気配を背中に残し───ふと、思う。




彼女は───ティファは今、何を思っているだろう。




『ジェノバ細胞とセフィロスの強い意志。そして俺の弱い心が生み出した人間。それが皆が知っていた俺………クラウドだ』



『……俺は幻想の世界の住人だった。でも、もう幻想はいらない……俺は俺の現実を生きる』




………こんな俺を、どう思っているだろう。




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