2016-10-31(Mon)
SWEET DISTANCE 6 - Cloud Birthday 2016 -
こんにちは、ももこです。
クラ誕SS6話、前半のみですがUPします。
本当はちゃんと書いておきたかったんですが、絵も描いてたら時間無くなっちゃったです……すみません(>_<)
前半だけという事もあり、今回はあまり話が進んでいません。
後半にやっと動き始める予定ですので、追加UPまでもうしばらくお待ち下さい(^_^;)
ここまでずっと回想なんですが、こんなに長くなるならリアルタイムでも良かったんじゃないの??って今更思ってます(^_^;)
ちなみに、ハイウィンドの仕様は私の想像で適当に書いてます。
ハイウィンドって飛空艇として大きいのか小さいのか分からないです。
全長237m……大きい気もするけど、人が行き来できる場所は飛行船みたいに下方部に限られてるイメージです。
定員34名ってΩには書いてるけど、思ったより少ないな~と思いました(^_^;)
表にペイントされてるセクシー美女がいかにもシドっぽくて好きです(*^_^*)
シエラ号にはペイントしないのかな??
それではまた来ますね!
拍手&閲覧ありがとうございました(*^_^*)
【Warning!】クラ誕SS6話です。クラウド視点。前半のみのUPですすみません~(>_<)作中に出てくるハイウィンドの仕様は私のオリジナルですのでお気を付け下さい。続きます。11/6後半UP。
SWEET DISTANCE 6
「シド?」
窓から身体を離しティファと共に振り向くと、シドが通路へ続くドアの縁に手を掛けて立っていた。
その指先がクイと曲がり手招きするように小さく動いた。
「どうした?」
傍へ歩み寄りながら俺が問うと、シドが得意気に腕を組みニンマリと笑みを浮かべた。
「いや…なんだ。今から離陸すっからよ、もし暇だったら特等席から見せてやろうと思ってな」
「特等席?」
何の事か意味が解らず、傍にいるティファと首を傾げて顔を見合わせる。
するとシドがおもむろに大きな溜め息を吐いた。
やれやれと言うように両手を広げて首を振る。
「特等席っつったら決まってんだろーが。コックピットよ!」
「コックピットって……そんな所に俺達が入っても良いのか?」
「まあ通常は部外者立ち入り禁止だけどな。今このハイウィンドはオレ様の指揮下にある。艇長のオレ様が良いってんだから良いんだよ。それに、そこの姉ちゃん達はとっくに見学済みだしな」
子供のように片目を弾きながらシドの指が差した先、すぐ隣を見ればティファが「あ…」と小さく声を出し、それからすぐににこりと頷いてみせた。
「クラウドを探している間に…ね。お先しちゃった」
「そうなのか…」
知らなかった。
……考えてみれば、飛空艇が手に入ったお蔭で俺を探すことが出来たのだから、皆一度はこの艇に乗り込んでいたという事になるのだろう。
「後はリーダーのお前さんだけだ。待ってるから来いよ。勿論、姉ちゃんも同伴でな」
「えっ」
小さく驚くティファを尻目にニヤリと口角を上げ、意味有り気にそう言ってシドが背を向ける。
楽しそうに口笛を吹かせながら奥へと歩いていくその背中を見送りつつ、隣の彼女へ視線を向けた。
紅茶色の大きな瞳が俺を見上げる。
「……どうする?」
「え…どうって……」
一応彼女の意志を確認しようと掛けた言葉に、けれどその表情は戸惑ったように口籠り下を向いてしまった。
ちらちらと所在無さげに揺れる彼女の瞳が艶やかな黒髪の向こうでちらりと覗く。
「……ティファ?」
「あ…うん」
呼び掛けに答えるティファの声音は酷く曖昧だ。
「……嫌だったら、別に」
「ううんっ、違うの!」
過る不安に先に言葉にしようとした矢先、彼女の瞳が大きく揺れて強く遮られた。
「私も……クラウドが良ければ……行きたい」
語尾が消え入りそうに小さくなったけれど、最後の言葉はしっかりと耳に届いた。
思わず頬が緩む。
良かった………断られなくて。
「ティファ」
安堵の気持ちと共に彼女を呼ぶ。
穏やかに響いたその声に、その瞳が俺を捉えた。
「行こう」
「……うん」
こくりと頷く口元が嬉しそうにはにかんだのは───俺の見間違いなんかじゃない……という事にしておこう。
「ここがチョコボを飼育できる部屋よ。私達が捕まえたチョコボもここに入れて運べるの。ここの人達は"チョコ房"って呼んでるらしいわ」
「そうか」
俺よりも艇内に詳しいティファの案内で通路を進んでいく。
全長200mを超える長大な飛空艇の内部は見た目に反しこじんまりとしていて、華美な装飾は一切無く、所々錆も浮いている所を見れば建造されてからそれなりの年数を重ねた艇のようだった。
部屋数も多くなく、さっきいた作戦室の他、寝泊まり出来る個室が数室、大部屋が数室、シャワールームとトイレ、厨房にダイニングルーム、チョコボの飼育房、簡単な喫茶室や談話室、コックピットのあるブリッジがあり、それ以外の殆どが機関室や燃料貯蔵庫になっているらしい。
教えられた他にも扉や階段はあったが、そこは専門のクルーのみが出入り出来る場所で立ち入る事は出来なかった。
各扉の前にはクルーがいて忙しそうに動き回っている。
年季の入った艇だ、メンテナンスもさぞ大変なんだろう。
クルー達はざっと見た所20名は乗り込んでいるように見えた。
年齢も様々で、熟年の技師らしく貫録を漂わせている者もいれば、明らかに新人と判る若い奴もいる。
その誰もが艇長であるシドを慕い、そして俺達の旅を共に見届けようとしてくれる同志なのだ。
その表情は誰一人として影を落とす事無く、明るい未来を信じて輝いている。
「クラウドさん、ティファさん、おはようございます!」
クルー達が明るい笑顔で声を掛けてくれる。
それに俺は少し戸惑いながらも軽く会釈し、ティファは律儀にお辞儀で返した。
「ティファさん、今日も美人ですね」
「あ、ありがとうございます…」
……時折こんな会話も交わしながら。
「皆お世辞ばっかりなんだから。恥ずかしいよね……ね、クラウド」
「……」
それに戸惑いつつ、けれど僅かに頬を染めつつ困ったような笑顔で返すティファ。
その横顔をそっと見つめる。
……別に、それが何だって言う訳じゃない。
………訳じゃない、けれど。
(………)
自分でも理由が解らないまま、何だか落ち着かない気分なって、足元に視線を落としそれを隠した。
そのまましばらく、ティファと共に二人並んで通路を進んでいく。
……いや、実際には俺の少し後ろにティファがいて、背中から彼女の案内を聞いているという状況だ。
最初は並んで歩き出したはずが、いつの間にか彼女の足は緩やかに速度を下げて、"いつもの"俺達の距離になる。
そして、それを自覚した途端、落ち着かない気分が更に深くなったのを感じた。
………この旅を始めた時から、俺の隣をティファが歩く事は無かった。
いつも必ず、一歩後ろに彼女の存在を感じていたように思う。
俺がどんなに歩幅を狭めようと、速度を緩めようと、頑なにその距離を保とうとしていた。
それが何故なのか、今だったら理由は解る。
偽りのソルジャーを演じていた俺を、彼女はずっと恐れていた。
食い違う五年前の記憶。
彼女の中の俺は、彼女にとって"クラウド"という存在であると同時に、そうではなかった。
だが、今は違う。
それは俺とティファ自身が一番良く知っている。
あのライフストリームの狭間が見せた光景は、俺と彼女の事実であり真実だった。
今の俺は紛れもなくニブルヘイムのクラウドであり、彼女の幼馴染みなんだ。
それなのに。
「あそこの角を曲がればブリッジへと繋がるのよ。急ぎましょう」
「……ああ」
………彼女は未だ、いつもの距離をずっと保ち続けている。
(………)
もしかしたら、自分はティファにとって好ましくない人間なのだろうか?
そんな嫌な考えが過るけれど、すぐに先程の彼女の笑顔が脳裏に浮かんだ。
そこにあるのは、以前のような愛想笑いではない、本物のティファの笑顔。
これまでずっと、彼女の本当の笑顔を見たいと思ってきた自分が言うのだ。
自分に向けられる彼女の、些細な表情の変化にだって気付かない訳がない。
ティファの笑顔は嘘じゃない。
(……でも)
その笑顔の後で、不意に訪れる間。
会話の途切れが合図のように、ふとした沈黙が度々続く。
その傍で、遠くを見つめるように下げられる彼女の視線。
気まずい空気から逃れるように、それから必ず彼女は俺の傍から離れていく。
理由は分からない。
ティファにはまだ俺に対して何か思うところがあるのだろうか?
その答えを聞きたいけれど、俺にはまだ彼女に対してそれを聞くような勇気は無い。
記憶を失っていたとはいえ、今まで散々ティファと距離を置いてきたんだ。
彼女が傷付くような態度も取ってきたと思う。
(………)
今なら───今の自分だったら、彼女に本当の気持ちで接する事が出来るはずなのに。
向けられる笑顔とは対称的なもう一人のティファに、どう接すればいいのか判らなくて酷く混乱している自分がいる。
「……だよね、クラウド」
「……」
「クラウド?どうかしたの?」
返事の無くなった俺にティファが心配そうに声を掛ける。
様子を覗くように、僅かばかり詰められたその隙間。
まだ遠い彼女との距離を少しでも狭めるように、踏み出す一歩を小さくしながら首を振る。
「…いや。何でもないんだ」
「そう?それならいいけど……」
………ただそう言って、彼女の気配をただ背中で追う事しか出来ない自分が………無性に情けないと思う。
(……くそっ)
ティファの足音を背中に聴きながら、やるせない感情を潰すように拳を握り締めた。
「……あら?」
不意に、ティファの声色が変わった。
「どうした?」
足を止め、落としていた視線を上げて振り返った。
同じように歩みを止めたティファの視線が俺の身体を通り過ぎ、その先を窺うように凝視している。
「見て、あそこ。人が蹲ってる……大丈夫かしら」
「え?」
ティファが指差した先へ向けると、ブリッジへと続く通路の脇で誰かが蹲っているのが見えた。
Next...
クラ誕SS6話、
ここまでずっと回想なんですが、こんなに長くなるならリアルタイムでも良かったんじゃないの??って今更思ってます(^_^;)
ちなみに、ハイウィンドの仕様は私の想像で適当に書いてます。
ハイウィンドって飛空艇として大きいのか小さいのか分からないです。
全長237m……大きい気もするけど、人が行き来できる場所は飛行船みたいに下方部に限られてるイメージです。
定員34名ってΩには書いてるけど、思ったより少ないな~と思いました(^_^;)
表にペイントされてるセクシー美女がいかにもシドっぽくて好きです(*^_^*)
シエラ号にはペイントしないのかな??
それではまた来ますね!
拍手&閲覧ありがとうございました(*^_^*)
【Warning!】クラ誕SS6話です。クラウド視点。
SWEET DISTANCE 6
「シド?」
窓から身体を離しティファと共に振り向くと、シドが通路へ続くドアの縁に手を掛けて立っていた。
その指先がクイと曲がり手招きするように小さく動いた。
「どうした?」
傍へ歩み寄りながら俺が問うと、シドが得意気に腕を組みニンマリと笑みを浮かべた。
「いや…なんだ。今から離陸すっからよ、もし暇だったら特等席から見せてやろうと思ってな」
「特等席?」
何の事か意味が解らず、傍にいるティファと首を傾げて顔を見合わせる。
するとシドがおもむろに大きな溜め息を吐いた。
やれやれと言うように両手を広げて首を振る。
「特等席っつったら決まってんだろーが。コックピットよ!」
「コックピットって……そんな所に俺達が入っても良いのか?」
「まあ通常は部外者立ち入り禁止だけどな。今このハイウィンドはオレ様の指揮下にある。艇長のオレ様が良いってんだから良いんだよ。それに、そこの姉ちゃん達はとっくに見学済みだしな」
子供のように片目を弾きながらシドの指が差した先、すぐ隣を見ればティファが「あ…」と小さく声を出し、それからすぐににこりと頷いてみせた。
「クラウドを探している間に…ね。お先しちゃった」
「そうなのか…」
知らなかった。
……考えてみれば、飛空艇が手に入ったお蔭で俺を探すことが出来たのだから、皆一度はこの艇に乗り込んでいたという事になるのだろう。
「後はリーダーのお前さんだけだ。待ってるから来いよ。勿論、姉ちゃんも同伴でな」
「えっ」
小さく驚くティファを尻目にニヤリと口角を上げ、意味有り気にそう言ってシドが背を向ける。
楽しそうに口笛を吹かせながら奥へと歩いていくその背中を見送りつつ、隣の彼女へ視線を向けた。
紅茶色の大きな瞳が俺を見上げる。
「……どうする?」
「え…どうって……」
一応彼女の意志を確認しようと掛けた言葉に、けれどその表情は戸惑ったように口籠り下を向いてしまった。
ちらちらと所在無さげに揺れる彼女の瞳が艶やかな黒髪の向こうでちらりと覗く。
「……ティファ?」
「あ…うん」
呼び掛けに答えるティファの声音は酷く曖昧だ。
「……嫌だったら、別に」
「ううんっ、違うの!」
過る不安に先に言葉にしようとした矢先、彼女の瞳が大きく揺れて強く遮られた。
「私も……クラウドが良ければ……行きたい」
語尾が消え入りそうに小さくなったけれど、最後の言葉はしっかりと耳に届いた。
思わず頬が緩む。
良かった………断られなくて。
「ティファ」
安堵の気持ちと共に彼女を呼ぶ。
穏やかに響いたその声に、その瞳が俺を捉えた。
「行こう」
「……うん」
こくりと頷く口元が嬉しそうにはにかんだのは───俺の見間違いなんかじゃない……という事にしておこう。
「ここがチョコボを飼育できる部屋よ。私達が捕まえたチョコボもここに入れて運べるの。ここの人達は"チョコ房"って呼んでるらしいわ」
「そうか」
俺よりも艇内に詳しいティファの案内で通路を進んでいく。
全長200mを超える長大な飛空艇の内部は見た目に反しこじんまりとしていて、華美な装飾は一切無く、所々錆も浮いている所を見れば建造されてからそれなりの年数を重ねた艇のようだった。
部屋数も多くなく、さっきいた作戦室の他、寝泊まり出来る個室が数室、大部屋が数室、シャワールームとトイレ、厨房にダイニングルーム、チョコボの飼育房、簡単な喫茶室や談話室、コックピットのあるブリッジがあり、それ以外の殆どが機関室や燃料貯蔵庫になっているらしい。
教えられた他にも扉や階段はあったが、そこは専門のクルーのみが出入り出来る場所で立ち入る事は出来なかった。
各扉の前にはクルーがいて忙しそうに動き回っている。
年季の入った艇だ、メンテナンスもさぞ大変なんだろう。
クルー達はざっと見た所20名は乗り込んでいるように見えた。
年齢も様々で、熟年の技師らしく貫録を漂わせている者もいれば、明らかに新人と判る若い奴もいる。
その誰もが艇長であるシドを慕い、そして俺達の旅を共に見届けようとしてくれる同志なのだ。
その表情は誰一人として影を落とす事無く、明るい未来を信じて輝いている。
「クラウドさん、ティファさん、おはようございます!」
クルー達が明るい笑顔で声を掛けてくれる。
それに俺は少し戸惑いながらも軽く会釈し、ティファは律儀にお辞儀で返した。
「ティファさん、今日も美人ですね」
「あ、ありがとうございます…」
……時折こんな会話も交わしながら。
「皆お世辞ばっかりなんだから。恥ずかしいよね……ね、クラウド」
「……」
それに戸惑いつつ、けれど僅かに頬を染めつつ困ったような笑顔で返すティファ。
その横顔をそっと見つめる。
……別に、それが何だって言う訳じゃない。
………訳じゃない、けれど。
(………)
自分でも理由が解らないまま、何だか落ち着かない気分なって、足元に視線を落としそれを隠した。
そのまましばらく、ティファと共に二人並んで通路を進んでいく。
……いや、実際には俺の少し後ろにティファがいて、背中から彼女の案内を聞いているという状況だ。
最初は並んで歩き出したはずが、いつの間にか彼女の足は緩やかに速度を下げて、"いつもの"俺達の距離になる。
そして、それを自覚した途端、落ち着かない気分が更に深くなったのを感じた。
………この旅を始めた時から、俺の隣をティファが歩く事は無かった。
いつも必ず、一歩後ろに彼女の存在を感じていたように思う。
俺がどんなに歩幅を狭めようと、速度を緩めようと、頑なにその距離を保とうとしていた。
それが何故なのか、今だったら理由は解る。
偽りのソルジャーを演じていた俺を、彼女はずっと恐れていた。
食い違う五年前の記憶。
彼女の中の俺は、彼女にとって"クラウド"という存在であると同時に、そうではなかった。
だが、今は違う。
それは俺とティファ自身が一番良く知っている。
あのライフストリームの狭間が見せた光景は、俺と彼女の事実であり真実だった。
今の俺は紛れもなくニブルヘイムのクラウドであり、彼女の幼馴染みなんだ。
それなのに。
「あそこの角を曲がればブリッジへと繋がるのよ。急ぎましょう」
「……ああ」
………彼女は未だ、いつもの距離をずっと保ち続けている。
(………)
もしかしたら、自分はティファにとって好ましくない人間なのだろうか?
そんな嫌な考えが過るけれど、すぐに先程の彼女の笑顔が脳裏に浮かんだ。
そこにあるのは、以前のような愛想笑いではない、本物のティファの笑顔。
これまでずっと、彼女の本当の笑顔を見たいと思ってきた自分が言うのだ。
自分に向けられる彼女の、些細な表情の変化にだって気付かない訳がない。
ティファの笑顔は嘘じゃない。
(……でも)
その笑顔の後で、不意に訪れる間。
会話の途切れが合図のように、ふとした沈黙が度々続く。
その傍で、遠くを見つめるように下げられる彼女の視線。
気まずい空気から逃れるように、それから必ず彼女は俺の傍から離れていく。
理由は分からない。
ティファにはまだ俺に対して何か思うところがあるのだろうか?
その答えを聞きたいけれど、俺にはまだ彼女に対してそれを聞くような勇気は無い。
記憶を失っていたとはいえ、今まで散々ティファと距離を置いてきたんだ。
彼女が傷付くような態度も取ってきたと思う。
(………)
今なら───今の自分だったら、彼女に本当の気持ちで接する事が出来るはずなのに。
向けられる笑顔とは対称的なもう一人のティファに、どう接すればいいのか判らなくて酷く混乱している自分がいる。
「……だよね、クラウド」
「……」
「クラウド?どうかしたの?」
返事の無くなった俺にティファが心配そうに声を掛ける。
様子を覗くように、僅かばかり詰められたその隙間。
まだ遠い彼女との距離を少しでも狭めるように、踏み出す一歩を小さくしながら首を振る。
「…いや。何でもないんだ」
「そう?それならいいけど……」
………ただそう言って、彼女の気配をただ背中で追う事しか出来ない自分が………無性に情けないと思う。
(……くそっ)
ティファの足音を背中に聴きながら、やるせない感情を潰すように拳を握り締めた。
「……あら?」
不意に、ティファの声色が変わった。
「どうした?」
足を止め、落としていた視線を上げて振り返った。
同じように歩みを止めたティファの視線が俺の身体を通り過ぎ、その先を窺うように凝視している。
「見て、あそこ。人が蹲ってる……大丈夫かしら」
「え?」
ティファが指差した先へ向けると、ブリッジへと続く通路の脇で誰かが蹲っているのが見えた。
Next...
