SWEET DISTANCE 8 - Cloud Birthday 2016 -2016-12-05 Mon 00:27
こんにちは、ももこです。
クラ誕SS第8話 やっぱり時間軸が戻ると展開がサクサク妄想出来て書きやすいですね(^^) と言っても、今回はクラウドが大変なだけですが(^_^;) 乗り物酔いってクラウドの最大の弱点なんじゃないかと思います。 だって、あんな身体の状態でまともに戦闘なんて出来ないと思います。 LV100のACクラウドも乗り物酔いは克服出来ていないのではないかな?? 普段は運転する立場なので酔わないけれど、もし運転席以外や公共の乗り物だったら大変なんだろうなあ……あ、でも、その時はティファが手厚く介抱してくれますね、きっと(*^^)v セフィロスを倒した世界最強の男が乗り物酔いでダウン……可愛いなあ(*^_^*) それではまた来ますね! 拍手&閲覧ありがとうございました(*^_^*) 【Warning!】クラ誕SS第8話です。クラウド視点。 SWEET DISTANCE 8 (参ったな…) 轟々と風が流れる甲板の上、断続的に襲い来る嘔吐感を堪えながら自分の不甲斐無さに頭を抱える。 ………先程感じた違和感はコレだったに違いない。 どうして今まで忘れていたのだろう───自分が重度の"乗り物酔い"体質である事を。 結局あの後、ブリッジでシドと合流し特等席から発進の瞬間を拝めたのは良いけれど、予想外に大きく揺れる艇内にグラグラと傾く身体と視界に襲われた俺は、次第に気分が悪くなり早々に自室へと引き上げる羽目になった。 いつもこんな不安定な離着陸をしているのだろうか。 そう問いたい気持ちになったが、なんでもシドによればオートドライブの機能は付いているものの、パイロット育成の為に今は操舵をマニュアルに切り替えているらしい。 『おう、すまねえな!まだ見習いなもんでよ。ちいとばかし揺れるが、まあ大目に見てやってくれや!』 若いパイロットの覚束ない手捌きに叱咤しつつ豪快に笑うシドに、俺は倒れないように両足を踏ん張りながら、ティファは傍にあった椅子に掴まりながら頷くのが精一杯だった。 更に、揺れが落ち着いたかと思ったら今度はナナキがやって来て。 『あれ?クラウド、どうしたの?顔が真っ青だよ?』 そう言ってクンクンと顔を近付けてきたものだから、再びあの強烈な臭いをまともに被る事態になってついに三半規管が限界に達してしまった。 『……ティファ、悪い……、俺、部屋で休むよ……』 『クラウド大丈夫!?顔真っ青よ!』 よろめきながら出口へと歩き出す俺にティファが心配そうに駆け寄るも、"乗り物酔いだ"なんてさっきのユフィとのやり取りを後に格好がつかなくて言い出せなかった。 『大丈夫だ。まだ少し疲れが残っているのかもしれない。……っ、……悪いけど、一人にしてくれないか』 『そう……分かったわ。でも、辛かったら言ってね』 『ああ。時間になったらまた来るよ。ティファはナナキと自由にしていてくれ』 『うん…』 いつまでも心配そうなティファへ、なるべく表情に出さないように声を穏やかにする。 『なんだあ?クラウド、船酔いかあ?』 『…っ、違う。そんなんじゃ、ない…』 『折角の船旅だってのに。情けねえなあオイ!』 『煩い……、っ』 シドの言葉に言い返したい気持ちに駆られるも、込み上げる悪寒が背中を震わせて叶いそうもない。 やれやれと言うようにシドが首を振る。 『おう、姉ちゃん!介抱してやんな』 『え!?ぁ…私……』 『一人で大丈夫だ。シドも、余計な事は言わなくていい』 動揺するティファににやにやと厭らしく笑う髭面の男を精一杯の眼光で睨みつけ背を向けた。 『ケッ!痩せ我慢しやがって』 『…、…』 『クラウド……』 背中に聴こえるティファの声に後ろ髪を引かれつつ踏み出すと、途端に襲いくる激しい嘔吐感に思わず足が止まりそうになる。 けれどそれに何とか耐えながら、ブリッジを後にして部屋へ戻った。 それからしばらくベッドに横になってみたものの、断続的に続く嘔吐感に堪らず洗面所へ駆け込む事数回───胃の中の物はあらかた吐き出して少し楽になった所で、こうして甲板に上がり風を受けている。 「……、っぐ!」 もう一度水で喉を潤そうと一口含んだ途端、誤って器官に入ったそれに噎せてしまった。 「、うっ、ぁ…ぐっ、、……はあっ…」 思わず咥内のものを思いきり吐き出し、ぜいぜいと肩で息をしながら再び競り上がる嘔吐感に視界が歪む。 空っぽの胃に吐き出すものは既に無く、僅かな胃液と涎が床にぱたぱたと落ちるのを涙に潤む視界に捉えては情けなさが込み上げる。 「…っ、はあっ……」 ようやく治まったそれに安堵の溜め息が零れる。 濡れた口元を拭い、ボトルのキャップを締めて甲板の上に転がした。 酔いが酷くならないように背中を柵に預けたまま態勢を楽にし、出来るだけ遠くを見つめた。 目線の遥か向こう、太陽の光を浴びてキラキラと水平線が輝いている。 その眩しさに瞼を落として、代わりに耳を澄ませば微かにカモメの鳴き声が聴こえた。 ……今は海の上か。 酔いに体力を奪われているのか、身体と頭が酷く重く感じる。 瞼を持ち上げるのも億劫だ。 「………」 そういえば───出発してからどのくらい経っただろうか。 海を渡った先の大陸が見えたらジュノンに到着する。 ……もうすぐだろうか。 頭がぼんやりとして時間の感覚が無くなっている。 「…っ、」 閉じた眼を開き、肩からだらりと垂れ下がる重い腕を持ち上げてズボンのポケットの中を探り携帯を取り出した。 二つ折りになったそれをパチンと開き、液晶に映し出された画面を確認する。 時刻は出立してから大分経ち、後30分もすれば皆へ招集を掛けなければならないようだった。 「くそ……こんな時に」 ジュノンヘ着けばすぐに戦闘が始まるかもしれない。 けれど、こんな状態ではまともに戦える気がしない。 体質とはいえ、こんな大事な時に皆の足手纏いになるのは御免だ。 「……、っ……」 背を滑らし、ごろりと床に身体を横たえる。 少しでも楽なようにと片腕を枕に横向きになって背を丸め眼を閉じた。 そのまま、静かに深い呼吸を何度も繰り返す。 時間一杯まで何とか良くなってくれたらいい。 そんな気持ちでしばらく静かにしていると、閉じた視界の隅で扉が開く音が聴こえた。 流々と流れる風の音に混じり、扉の閉じる音、そして微かな靴音が鼓膜を揺らす。 (誰だ……?) 段々と近付いて来るそれに閉じた瞼が独りでにぴくりと動くが、これ以上余計に動いて気分を悪化させたくない。 (まあ、いいか…) 敢えて眼は開けず、そのまま遣り過ごそうと狸寝入りを決め込む事にした。 きっと誰か、風にでも当たりに来たに違いない。 そう思いながら、どうか自分に構わないでくれと願う。 けれど……。 (……!) コツリと、小さな音がすぐ後ろから聴こえた。 そして───靴音はそこで途切れた。 (……、……) どうやら、俺のささやかな願いは叶わなかったらしい。 衣擦れの音がして、すぐ傍に誰かが立ち止まったのが分かった。 (休憩時間終了の合図、かな) 心の中で溜め息を吐く。 まだ到着まで時間はあるが……何かあったのだろうか。 それならば仕方ない。 眼は閉じたまま、意識だけを身構える。 動こうと思ったが、どうにも力が入らなくてそのまま声を掛けられるまで黙っていようと惰性が働いてしまったからだ。 (……?) 背後の人物は、黙ったまま動きを見せなかった。 じり、と靴を僅かにずらす音が小さく聴こえるだけで。 (……) 用があるなら早くしてほしい。 すぐ傍で沈黙を続ける気配に次第に落ち着かなくなってくる。 募る焦りに眼を開けようか迷っていると。 (…!) 不意に、瞼の外側に陰が差した。 ふわりと、しなやかな先端が頬を掠める。 「クラウド…?寝てるの…?」 ───ティファだ。 (…っ) 思いがけない声に身体が硬直する。 跳ねる心臓にピクリと動こうとする身体を反射的に抑えて呼吸を殺した。 様子を窺う彼女の気配に思わずそのまま寝たふりを続けてしまう。 (何やってるんだ、俺) 別に普通に返事をしても問題ないだろ。 そう思ったが、時すでに遅し。 頭上で微かな溜め息を感じたと思った直後に気配が遠のき、代わりに身体が温かな布に包まれた。 柔らかに香る花の匂い。 洗い立ての、ティファのブランケットだ。 「…もう。こんな所で寝たら風邪引いちゃうよ」 背中越しに苦笑交じりの声を聴く。 ブランケットの端を肩まで引き上げた彼女の手がそっと離れた。 (ティファ……わざわざ様子を見に来てくれたのか?) ドキドキと煩い鼓動を抑えながら彼女の気配を耳で追う。 きゅ、きゅ、と布を擦る音が聴こえた。 ……俺が汚した床を綺麗にしてくれているのだろう。 (悪い……ありがとう) 心の中で彼女に礼を述べる。 本来なら起きてきちんと向かい合うべきだろうが、ずっと狸寝入りをしている事に気が引けて今更起きてましたと言い出す勇気が出なかった。 ……情けない。 程なくしてコツンと水のボトルが傍に置かれ、彼女の動きが止まった。 (……、ティファ……) このまま行ってしまうのだろうか。 何とも言えない寂寥感が過るが、今更引き留める術も無い。 (……) まだある彼女の気配を背中に感じながら、彼女がくれた花の香りに意識を向けて感情の波を紛らわすしかない。 不意に、大きな衣擦れの音がしてはっと眼を瞠った。 クリアになった視界一杯に映し出される鮮やかな景色。 一瞬の眩しさに眼を細める。 「……、しょ」 とんと、彼女が床に座り込む気配に、平静さを取り戻しつつあった鼓動がまた速くなるのを感じた。 ティファにばれないように再び眼を閉じ、必死に寝たふりを続けながら意識だけを後方へ向ける。 座り込んだ彼女は特に何かをするでもなく、ただじっと静かにそこにいた。 時折吹く強い風が彼女の長い髪をなびかせては、その先端を布越しに感じるだけで。 (ティファ…?) Next... ![]() |
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