SWEET DISTANCE 11 - Cloud Birthday 2016 -2017-04-04 Tue 23:34
こんにちは、ももこです。
クラ誕SS11話 ティファ視点2話目ですが、ティファの乙女心全開になっています(*^_^*) 8話から続くクラウド視点と対比させているので、合わせてご覧頂ければ良いかもです。 後半からもっと突っ込んだ内容(ネガティブ復活&エアリス絡み)になる予定です。 それではまた来ますね! 拍手&閲覧ありがとうございました(*^_^*) 【Warning!】クラ誕SS第11話です。ティファ視点。 SWEET DISTANCE 11 (やっぱり持ってきて良かった) 柔らかなブランケットに剥き出しの肩まですっぽりと覆われた姿を前に一人ごちる。 (あれ…?) ふと、床の一角が水浸しになっているのに気付いた。 傍にはクラウドが愛用している飲料水のボトルが無造作に転がっている。 (クラウド……) ここに来ても尚、彼の不調を示すそれに心が軋む。 おそらく、ずっと一人で悪心と戦っていたのだろうから。 (……言ってくれればいいのに……) ───私だって、あなたの背中を擦ってあげるくらい、出来るよ……? 幾分小さく見える彼の背中に囁きながら、もどかしさにブランケットの裾をきゅっと握り締める。 それからポシェットの中からハンドタオルを取り出して濡れた床に強く当てた。 (…よし) あらかた綺麗になった床を確認し、転がっているボトルを手に取る。 中身が入っているのを確認してクラウドの頭の傍にそっと置いた。 立ち上がり、もう一度クラウドの様子を確認する。 「………」 クラウドはまだ静かに眠ったまま眼を覚ましそうにない。 (………) このまま自分も部屋へ戻ろうか? だって、彼の様子を確認し目的も果たした今、私が彼に出来る事は無い。 無い、けれど………。 (……クラウド……?) 何故だろう………彼の背中がとても寂しそうに見えた。 行かないで、と言っているように。 (……ううん、違う) けれど、すぐに思い違いだと気付き首を振った。 両手を組み、胸の前できゅっと握る。 ………自分の心の声を聴くように。 (───私自身が、彼の傍に居たいんだわ) 「……、しょ」 クラウドの眠りを妨げないよう、一人分の隙間を空けて慎重に腰を下ろす。 「…っ」 一際冷たい空気の流れに、剥き出しの肌がブルリと震えた。 膝を抱え、身体を丸めて暖を取る。 交差した両腕を肌に当て、緩く擦った。 (上着、羽織ってくれば良かったなあ) 溜め息を吐きながら、ちらりとクラウドの方に眼を向けた。 途端に可笑しくなって一人笑う。 (なんて間抜けなんだろ) クラウドの事ばかり心配して、自分がどんな服装かを忘れるなんて。 「………」 そぅっと、彼の背中から広がるブランケットの裾に手を伸ばした。 指先に、柔らかな温もりが触れる。 (…あったかい) 暖を求めて指先をブランケットの下に忍ばせれば、それはクラウドの体温を纏い、一層の温もりをくれた。 「……、……」 相変わらず、眼に映るのは見慣れた彼の背中だけ。 ……でも、今は。 (クラウド……) 指先から伝わる体温が、彼との距離を感じさせなくしてくれる。 それが……凄く、嬉しい。 (……そういえば) ───そういえば、"あの時"も同じような感覚だった。 (あの時は……無意識だったな……) 数日前の出来事が脳裏に甦る。 温かくなった手を軽く握ってみれば、その時の感覚のまま、ほんのりと頬が熱くなるのを感じた。 数日前、ミディールでの大地震。 あの時、意識の無いクラウドと一緒に噴出したライフストリームの波に飲まれて………気が付けば、真っ暗な闇の中に一人取り残されていた。 ぼんやりとする頭と重い身体を引きずるようにして起き上がる。 『こ、ここは……? どうなったの、私……?クラウドは……!? クラウドは、どこ!?』 慌ててさっきまで一緒にいた筈のクラウドの姿を捜すけれど………返事は無い。 途端、ざっと血の気が引くのを全身で感じた。 (嘘……クラウド……!!) 彼とはぐれてしまった事実に呆然となる。 その時、すぐ後ろから人の声が聞こえたような気がして振り向いた。 『クラウド!?』 安堵が広がったのも束の間、そこは闇が広がるばかりで、彼の姿はおろか小さな生き物の気配さえ無かった。 (気のせい…?でも、確かに何か……) 確かに何か、小さな音が聞こえたのに。 窺うようにして辺りを見渡す。 その時、また何か聞こえた。 今度は遠く前方から。 『え……何……? 誰……?』 暗闇の中、眼を凝らしてみる。 けれど、やはりそこには誰の姿も見付けられない。 (……っ) 声のする方へ、ゆっくりと足を進めてみる。 すると、今度はひそひそとした声が辺り一面から途切れ途切れに聞こえてきた。 まるで私を遠くから見定めるような、遠くで囁き合う幾つもの声。 何を言っているのか聞き取れないまま、得体の知れない恐怖に肌がざわめいた。 『誰なの……? 聞こえないよ……』 震える喉を押しのけて、小さな声を絞り出した。 すると、私に応えるように、小さかった声の塊が段々と近付いてくる気配に足が止まった。 ふわりと、耳元を掠めるように言葉が響く。 『えっ?何…?』 言葉の意味を聞き取れないまま、今度はもう片方の耳元に違う声が。 『誰?』 すぐさま声のした方に反応するも、今度は上から。 『えっ?』 下から。 『…っ』 まるで私をからかうように、聞き取ろうとすればする程、大小様々な声が私の周りを物凄い速さで通り過ぎていく。 雑踏の中に取り残されたような感覚に軽いパニックになりながら、それでもクラウドへの手掛かりは無いか言葉を探した。 すると、不意に耳元ではっきりとした言葉が聞こえた。 『え?』 どこか聞き覚えのある声。 でも、誰だろう……思い出せない。 そもそも、この声は男性?…女性? 子供なの?……大人? それすらも曖昧なままだ。 『誰なの?何を言っているの?』 必死にその声の主に問いかける。 そうしたら、それはいきなり声を高くして笑い出した。 それから泣き声になり……最後に酷い怒声に変わった。 『ちょっと、待って……! 私、そんなの、知らない!違う、私じゃないよ……! 私、そんな事しない!!』 突然、身に覚えのない怒りをぶつけられて戸惑う。 けれど、響く声はそれ以上の激しさでもって私の鼓膜を震わせた。 『あっ…!』 直接頭の中に大きな怒鳴り声と嘲笑が響き渡り、頭が割れるような痛みが襲う。 まるで、頭を金槌で殴打されるような感覚。 それから、痺れるように身体の自由が利かなくなっていくのを感じた。 乗っ取られる……!! 『いやッ、やめて……!! 中に入って来ないで!!』 余りの恐ろしさに、心細さに、ついに膝を折って蹲った。 身体を丸め、声の滑り込む隙間を埋めるように必死になって耳を塞ぐ。 『誰か、助けて……! お願い……!!』 私の必死の懇願を嘲笑うように、耳を塞ぐ手から力が抜けていく。 誰かが私の中に入り込み、自由を奪っているかのように。 視界が揺れる。 ぼやけてくる。 喉が痛い。 息が苦しい。 私……死んじゃうの? (嫌……嫌……っ!!) (嫌……あなたに会えないままなんて……クラウド……!!) 絞られた喉にある限りの力を込めて彼に願う。 『助けて、クラウドッ!!』 涙で霞む視界の向こう、満天の星空が拡がっていく。 ………ファ………。 ………クラ……ド………? 漆黒の闇に飲まれる意識の奥、あなたの声に触れた気がした。 Next... ![]() |
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