Always Together 3 - Tifa Birthday 2017 -2017-05-15 Mon 01:44
こんにちは、ももこです。
遅くなりましたが、ティファ誕SS第3話 今回は回想ばっかりで、あんまり展開進んでなくてすみません(>_<) 妊娠初期って色々と大変だよね……という事を書きたかったのです(^_^;) それではまた来ますね! 拍手&閲覧ありがとうございました(*^_^*) 【Warning!】ティファ誕SS第3話です。 『ねえ、クラウド。今日もお仕事遅くなる?』 そうマリンに尋ねられたのは、一昨日の事だったか。 朝食後、ティファが淹れてくれた珈琲を片手にカウンターで寛いでいた俺は、眼の前の新聞紙面からその小さな声に目線を移した。 そろそろ登校時間なのだろう、まだ幼い身体に不釣り合いな大きなバッグを背負う娘の頭に掌を乗せて、くっと肩を竦めた。 『ああ。今日は遠方があるから少し遅くなるかもしれないな。なるべく早く帰るようにはするが……』 『……そっか』 ごめんな、と軽くひと撫ですると、途端に落胆の表情に変わった。 唇を一文字に結び、バッグの肩紐の部分を固く握り締めながらちらりとこちらを一瞥する。 ……明らかに何か言いたそうだ。 『……どうした?』 『あのね……今日は出来るだけ早く帰ってきてほしいの』 『何かあるのか?』 首を傾げて問い返すと、重なった視線の先、大きな瞳が揺らめいた。 何かを確認するように、店内をきょろきょろと見渡すマリン。 その先には誰もいない。 『……、ティファなら二階に行ったぞ?』 『シーッ!ダメ、聴こえちゃうよっ』 ティファの名前を出した途端、なぜか慌てたマリンに制されてしまった。 『マリン?』 『クラウド、ちょっと、こっち』 『…?』 そして耳を貸すよう手招きで促され、言われるがまま姿勢を崩した先、こっそりと鼓膜に落とされたその言葉に思わず眼を瞠った。 『あのね、クラウドには内緒って言われたんだけど……』 Always Together 3 酷く水浸しになったシンク周りを前にして足を止める。 (………どうせ朝になれば、朝食の支度ついでにティファが片付けてくれるだろう) いつもなら、満腹感に後押しされた眠気と疲労感に、ついそんな惰性が働くところだが……。 『……』 踵を返し、先程の位置に戻って布巾を手に取った。 派手に飛び散った水滴を、いつも彼女がそうしているように、一滴も残さないよう丁寧に吸い取っていく。 手元を滑らせた傍から、磨かれた輝きが本来の姿を現していく。 小さな光を浴びて、仄かに優しい銀色に眼を細めながら、頭の中では一昨日のマリンの言葉が再生されていた。 『ティファ、昨日から具合悪いみたい……あんまりご飯食べてないし、食べてもすぐ吐いちゃって大変だったの。お客さんも変だなって思ったみたいで、みんなすぐ帰ったからお店も早く閉めちゃったの』 それを聞いた時、既にティファの妊娠を知っていた俺はすぐにその原因が何であるかを悟った。 それと同時に、すぐに彼女の元へ行かなければとも。 『マリン、ありがとう。後は俺に任せてくれ』 小さな頭を撫でながら口早に言うと、まだ中身の残るカップと新聞をカウンターの上に置いて立ち上がった。 『クラウド!ティファどうしちゃったの?病気なの?』 只ならぬ俺の様子に、マリンが大きな瞳を一層潤ませた。 俺は慌てて首を横に振った。 『ティファは大丈夫だ。病気なんかじゃない……心配しなくていいんだ』 『赤ちゃんも?』 『ああ』 『…ほんとに?』 『ほんとだ』 言いながら腰を落とし、今にも泣き出しそうなマリンの肩に手を置いてそっと頭を撫でてやる。 子供達にはティファの妊娠は既に伝えてあったけれど、その後のケアについてまでは特に教えていなかった。 おそらく、子供達はティファの腹が膨らんでいく、くらいにしか想像していないだろう。 俺だって、シド夫妻の様子を眼にするまでふんわりとしたイメージでしかなかった。 ………マリンの心配も、当然か。 『子供が出来ると、女の人は皆そうなる』 『そうなの?』 『ああ。……ほら、鼻出てるぞ』 カウンターの上にあるティッシュボックスから一枚取り出し濡れた鼻と目元を拭ってやると、マリンが擽ったそうに眉を寄せた。 けれど、その後に現れた柔らかな表情にほっと胸を撫で下ろした。 『でも、無理させる訳にはいかないからな。ティファには俺からちゃんと言っておくから、マリンは何も心配しないで学校へ行っておいで』 『クラウド…』 『その代り、帰ったらティファの手伝い、頼むな。俺も今日は早く終わらせるから』 『うん!ありがとう、クラウド』 ───悪阻(つわり)が始まったとティファから報告を受けたのは、子供達が元気に学校へ向かってからすぐの事だ。 店のソファに並んで座るティファの肩を引き寄せながら、その耳元へと囁く。 『いつから?』 『……三日くらい前から。でも、まだ軽いから……大丈夫だと思って黙ってたの』 幾分掠れ気味の彼女の声に、いつもよりずっと白い首筋。 昨日から食べ物を口にしていないというのは本当らしい。 知らず、眉間に皺が寄る。 『…なあ、ティファ』 『…ん?』 『そういう事は……もっと早く言ってくれないか?』 『………』 『何かあってからじゃ遅いだろ?……第一、俺も子供達も心配する』 『……ごめんなさい』 肩に乗る彼女の重みを掌で掬いながら上向かせれば、仄かに潤む瞳がふるりと揺れていた。 『………』 謝るくらいならもっと早くに周りを頼るべきだ、と、こんな彼女を眼にする度思う。 ティファはどんな時でも必要以上に一人で頑張り過ぎる。 頑張る事と無理をする事は一緒じゃない。 もし俺がマリンから昨日の様子を聞かなければどうなっていたのか……想像すら恐ろしい。 『今日は俺も早く戻るよ』 『え?でも…』 『ティファが無理をしないように見張ってないとな』 『無理なんてしてないよ?』 『してるさ。顔色を見ればすぐに判る』 『……』 ティファだって、こんな状態では店だってまともに営業するのは厳しいだろう。 星痕が治まってからというもの、ありがたい事に、遠ざかっていた客足は以前の倍増しで取り戻す事が出来た。 俺のデリバリーの仕事も、右肩上がりで順調にきている。 そのお蔭で、ある程度の蓄えがあった。 だから、大丈夫だ。 足りない分は、依頼を増やすなりして俺が何とかすればいい。 『なあ、ティファ。店……暫く休んだらどうだ?』 「……よし」 蛇口を捻り、水を止める。 固く絞った布巾を広げてハンガーに掛け、軽く叩いて馴染ませた。 拭き残しが無いのを確認して店内の照明を落とすと、真っ直ぐに二階への階段へと向かった。 Next... ![]() |
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