花束を、君に 【心理テスト】2017-07-02 Sun 00:57
こんにちは、ももこです。
突然ですが、知り合いから面白い心理テストを聞いたのでちょっと紹介します。 クラティSS風味です。 最後にアンケート置いてありますので、もしご興味がありましたら皆様もどうぞ(^^) 答えを知っていたらすみません(^_^;) ちなみに、アンケートの結果を見て答えになるSSを書いてみようかなと思います(^^) それではまた来ますね! 拍手&閲覧ありがとうございました(*^_^*) Flowers for you 今、俺はとある一軒の花屋の前に来ている。 この辺りでは珍しく、数多くの種類を取り揃えていると噂の、最近出来たばかりの大きな生花店だ。 何故仕事でもないのにこんな所にいるかは……後程分かるので今は割愛する。 とにかく、普段配達以外で滅多に訪れる事の無いその場所で、かれこれ30分はうろうろと物色していた。 「お客様」 そんな俺を見かねたのか、一人の店員が声を掛けてきた。 「どんな花をお探しですか?」 「いや……まだ、どれとは」 「贈り物ですか?」 「ああ…まあ」 「ご友人ですか?」 「いや…」 満面の営業スマイルで矢継ぎ早に質問してくる店員に気圧されつつ曖昧に濁していると、何か気付いたのかいきなり手を叩いてぱあっと眼を輝かせた。 「あっ、もしかして…彼女さんですか?」 「……いや」 「では、奥様?」 「………」 ───当たり。 今日は俺がティファと結婚してからちょうど一年の記念日だったらしい。 らしいというのは───実は、俺はその事をすっかり忘れていた。 というか、元からそういう記念日には全くと言っていい程疎いし気にした事もない。 ユフィ曰く、「女心全っ然解ってない!!」………らしいが……そもそも、男がなった事も無い女の心を解れと言うのが無茶な話じゃないのか……? まあ、そんな事は今はどうでもいい。 そんなだから、今朝も普段通りそのまま仕事に出かけようとして……玄関先で子供達に引き止められてしまった。 『クラウド。今日何の日か分かってるよな?』 『どうした?何かあるのか?』 『うわっ、クラウドサイテー。ティファがかわいそうだよ』 いきなりデンゼルに呆れたようにそう言われ、内心グサッとなりつつ首を傾げる俺に、今度はマリンが大きなため息を吐いて小声で教えてくれた。 『今日はクラウドとティファの"ケッコンキネンビ"なんだよ』 『………………え』 『え、じゃなくって!ティファ、朝からソワソワしてるでしょ?クラウド、気付いてないの?』 ………正直、たった今知った。 そうか……もうそんなに経つんだな……。 毎日がハネムーンみたいなものだったから気付かなかった。 『……すまない』 『も~っ!だから今日は出来るだけ早く帰ってきてね。ティファ、何も言わないけど、昨日からクラウドの好きなごちそう作るんだって張り切ってるんだから!』 『あ、ああ』 腰に手を当て、幼い人差し指をビシッと鼻先に突き付けてくるマリンに瞠目しつつ頷いた。 『今日は早く帰るようにする。約束だ』 『うん、絶対だよ。あ、あと、ティファにプレゼント買ってくるのも忘れないでね。ティファが喜びそうなものだよ』 『…分かった』 『じゃ、いってらっしゃ~い』 言いたいことは言ったとばかりに笑顔で送り出す子供達の声を背中に受けて………今、俺はここにいる。 「………」 ……さて、困った。 いきなりプレゼントを用意しろと言われても………欲しいものがあるかティファにリサーチする間も無く、もうそろそろ帰宅時間も迫ってきている。 配達の合間に何とか考えた末、昔ティファに花をあげた事があったのを思い出した。 花売りをしていたエアリスから成り行きで買ったものだったが……。 『あら? お花なんて珍しいわね。スラムじゃ滅多に咲かないのよ』 『………』 『でも……プレゼントにお花なんて。クラウド、そうなんだ~』 そういえば、あの時のティファ、とても喜んでいたよな……。 花なら無難だろうか。 そう考えて急いでここに来てみたが……そういえば、ティファの好きな花ってなんだ? ………。 取り敢えず、店員に聞いてみるか……。 「今日は……記念日で」 「まあ、奥様との結婚記念日なんですね。素敵!」 「………」 まだ肝心なところを言っていないが……この店員、意外と鋭いな。 満面の笑みで眼を輝かせる店員に感心しつつ頷いた。 「それなら薔薇がお勧めですよ。定番ですけど、一番人気ありますから」 「薔薇か…」 そう言うと、店員が眼の前にあった数本の薔薇を束ねて小さな花束を作ってみせた。 深紅の薔薇の花束。 たった数本でも、それは瑞々しく大ぶりな花弁は眼にとても華やかに映った。 ───これならティファも喜んでくれるだろうか。 『ティファ。……これ、あげる』 『ありがとう、クラウド。ん~、良い香り!お店を花でいっぱいにしちゃおうかな』 数年前、たった一輪の花でも嬉しそうに微笑んだティファの笑顔が脳裏に蘇る。 (ティファ……) 決めた。 プレゼントはこれにしよう。 「如何ですか?」 「そうだな……貰うよ」 自然と上がる口角を抑えつつ、店員へ向かう。 「いくらだ?」 「一本500ギルになります」 「じゃあ、それを10本」 「はい、ありがとうございます。色はどうされます?」 「色?」 「はい。ただ今当店には赤と白の二種類ありますので、どの色を何本お包みしましょう?」 「………」 色………そうだな。 俺がティファに贈るなら───………。 はい、ここで問題です。 クラウドがティファへのプレゼントに薔薇を購入しようとしています。 赤と白で選べるそうです。 本数は10本。 色の組み合わせは自由です。 赤と白を混ぜても良いし、単色でも構いません。 さて、クラウドはどんな組み合わせの薔薇の花束をティファにプレゼントしたでしょうか(^^) ちなみに、クラウドからティファだけではなく、逆にティファからクラウドへ薔薇の花束をプレゼントする場合も考えてみて下さい(^^) クラウドやティファになりきって花束を作ってみて下さい(^^) Flowers for you … Answer … 脳裏に浮かんだのは、艶やかな彼女の瞳。 "───…クラウド……" 深みのある紅玉(ルビー)を、蜜で溶かしたような………甘蜜色のティファの色だ。 「……全部赤にしてくれ」 迷うでもなく、自然とそれを口にしていた。 「かしこまりました。ラッピングに少々お時間頂きますが…」 「頼む」 紙幣を渡し、幾つもの薔薇の中から選別作業に入る店員を見送る。 少し離れた壁際へと場所を移し、軽く背中を預けた。 「お待たせしました!」 包装を終えた花束を手に、店員がやってきたのはそれから10分後。 清楚なピンクベージュとシックな黒の不織紙、艶のあるセロファン、繊細なゴールドが装飾してある赤いリボン。 それらで華やかにラッピングされた10本の深紅の薔薇がそっと手渡された。 「保水剤を根元に入れてありますが、なるべく早くお持ち帰り下さい」 「ああ。ありがとう」 受け取りながら頷くと、店員が少し形の崩れてしまったリボンを直しながらニコリと笑った。 「特に大ぶりで色の良いものを選びましたから。奥様もきっとお喜びになりますよ」 「…そうだな」 どうやら見栄えに気を遣ってくれたらしい。 店員の気遣いに苦笑と共に感謝しつつ、店を後にした。 フェンリルの荷台に花束を括り付けていると、突然携帯の呼び出し音が鳴った。 手を止め、ワークパンツのポケットからそれを取り出し画面をスライドさせる。 黒いそれが明るく光り、画面が映し出された。 "SEVENTH HEAVEN" ───ティファだ。 自然と上がる口角を覚えつつ、イヤフォンを当てる。 「…はい」 『あ、もしもし。クラウド?』 「うん」 俺の携帯にかけているのに、わざわざ本人確認してくるのはティファの癖なんだろう。 彼女らしい律義さに眼を細めながら、その声に耳を傾ける。 「どうした?」 『あ…今日、何時に帰って来れるかなって、確認。忙しい?』 「いや。もう終わった。今から帰るよ」 そう言って携帯の時計を見る。 "17:30" 「あと……そうだな、20分位で帰れると思う」 『じゃあ、18時には着くわね』 「ああ」 実際はフェンリルを飛ばせば10分位で着ける距離だ。 なるべく早く帰りたい所だが……今日はデリケートな荷物があるから、少し遅めに言っておいた方が良い。 『うん、分かった。ご飯まだでしょ?用意して待ってるね』 「分かった」 『気を付けてね。じゃあ……あっ、そうだ。実は今……、…………』 「ティファ?」 イヤフォンの奥からティファの焦った声を聴いたと思ったら、いきなり音声が途切れ出した。 「ティファ?おい、ティファ?」 『──…、──…』 「………くそ、電池切れか」 通話の切れた画面には、大きく"Enpty"が映し出されていた。 「……帰るか」 仕方ない。 ティファが最後に何を言おうとしたのか分からないが、とにかく今は早く帰ろう。 携帯をポケットへ押し込み、花束を固定する。 シートに跨り、スロットルを回した。 いつもより少し控えめなエンジン音に、赤い花弁がふるりと揺れる。 「落ちるなよ」 ゴーグル越しから背中に見える、彼女の花に小さく笑んだ。 「おっかえり~♪遅かったじゃん」 「!?」 帰路に着きドアを開けた途端一番に俺を出迎えたのは、遠い異国にいるはずのニンジャ娘だった。 「……っ、何でお前がここにいるんだ」 「なにさその嫌そうな顔!アタシが遊びに来るの文句ある!?」 文句あるもなにも……今日に限って何で来てるんだ。 「………」 ちらりと、外に停めてあるフェンリルに目線を移す。 暗がりでよく見えないが、その荷台にはティファへのプレゼントが積んである。 こういう物を改めて贈るなんて滅多に無いから、出来ればティファと二人きりの時に渡したかったのだが……。 「お前、今日泊まっていくのか?」 「だったらどうなの?」 「……(チッ)」 「あ、今「チッ」って言った?可愛いユフィちゃんに心の中で「チッ」て言った!?ひっどーい!」 「…………」 盛大に溜め息が出た。 「ちょっと!待ちなさいってば!コラッ!」 「………五月蠅い………」 人の気も知らないでギャイギャイ騒ぎ出すユフィにげんなりしつつ、軽く押しのけて店の中に入る。 「あっ、クラウド!待ってたんだよ!お帰りなさい」 「お帰りー」 可愛らしい声と共に、今度は子供達が出迎えてくれた。 「ただいま」 ぽすんとじゃれるように腰に抱き着く二人に自然と頬が緩んでいく。 「なあクラウド、なんで電話きっちゃったの?」 「え?」 青い大きな瞳で見上げながら、デンゼルが怒ったように言う。 「さっき、ティファが電話したでしょ?でも、いきなりきれて、ティファもわたしたちも心配したんだから!」 今度は反対側から、マリンが拗ねたように口を尖らせた。 ああ、そうだ。 そういえば、さっき途中で電池切れを起こしたんだった。 「ああ、あれは……すまない。途中で電池が切れた」 「なんだよー。だから毎日充電しろってティファに言われるんだぜ」 「もークラウド、ダメダメなんだから!」 「ダメダメ…」 子供達の言葉に今朝同様グサッとなりつつ、苦笑で誤魔化していると。 「お帰りなさい、クラウド。心配したわ」 「ティファ」 丁度カウンターの奥からティファが出てきた。 今朝方振りの彼女の姿に、更にそこが緩むのを自覚しながら、肩を竦め頭を掻く。 「ただいま。ごめん、充電が切れた」 「うん。聞いてた」 ティファの瞳が安心したように緩やかな弧を描いた。 「何だったんだ?途中で何か言いかけてただろ?」 「ユフィが来てるよって、伝えたかっただけ」 「それだけ?」 「あと、あんまりスピード出さないでねって。急いで事故に遭ったら大変だもの」 「ティファ…」 左指のリングを口元に、はにかむように笑うティファに愛おしさが込み上げる。 本来ならここで彼女の腰を引き寄せて、その唇にいつもの挨拶をする所だが……。 「ちょっと~新婚さん。なに二人して見つめ合っちゃってんの~?」 「えっ!?ち、違うわよ。何言ってるの」 「………」 ………予想通り、横から茶々を入れてくるユフィに邪魔されて叶わなかった。 まあ、今日は子供達もまだ起きてるからな。 いつもはもっと遅くに帰るから、閉店間際であれば容易に彼女と二人きりになれるのだが。 (……?) そういえば……。 両脇にいる子供達の頭を撫でながら、店内をぐるりと一望する。 「店、どうしたんだ?この時間に客が一人もいないなんて珍しいな」 「え?ああ…うん」 俺の質問になぜかティファの眼が所在無げに動いた。 薄らと頬を染め、モジモジと落ち着かない。 「ティファ?」 「(ちょっと、クラウド)」 「マリン?」 不意に腰の辺りにいたマリンに呼ばれ、耳を貸すよう袖を引っ張られた。 膝を落とし、耳を寄せる。 「(朝話したでしょ。今日はケッコンキネンビで、ティファ、ごちそう作るためにお店お休みにしたの)」 「……あ」 ………そういう事か。 途端、店内に漂う食欲を刺激する薫りが鼻孔に届いた。 奥のテーブルを見れば、そこには様々な料理と食器が行儀よく並べられているのが見えた。 そのまま目線をティファに移せば、その顔は耳まで真っ赤になっていた。 腰を上げ、再びティファに向き直る。 「…ティファ、その…今日……そうだよな」 「う、うん…そうなの…」 「………」 「………」 お互いに今日がそういう日だと話した訳じゃないから、何だか異常に照れ臭い。 「だーかーらっ!アタシもこーやってお祝いに来てあげたのだ!」 「ぐっ!」 「ユフィ!」 いきなり背中を硬い何かでドンと突かれ、思わず前につんのめった。 …が、寸での所で持ち前の反射神経が発揮され、何とか無様な転倒は免れた。 「クラウド、大丈夫?」 「っ…ユフィ、お前」 ティファの腕(と胸)に支えられ、ズキズキと痛む背中に顔を顰めながら振り向くと、いきなり中身の入った一升瓶が飛んできた。 ニイッと笑うユフィの満面の笑顔と共に、眼の前にドンと置かれる。 「コレ、ウータイの最高級よん♪一年に3本しか作れない幻の大吟醸"迂ー鯛"!あんた達の為に苦労して手に入れたんだから」 「わあ、ありがとうユフィ。早速今日開けさせてもらうわね」 「えへへ~♪アタシも飲ませて~」 「もちろん」 「やっり~!」 「………」 ………前と後ろで朗らかな会話をしている二人に挟まれ、身動きが取れない。 「クラウド、大丈夫?」 「あ、ああ」 ひとしきり会話が終わった所で、ティファが心配そうに聞いてきた。 まだ背中に痛みは残るが、首を縦に振って答える。 「じゃ、私、ご飯の用意するね。皆は先にテーブルに座ってて」 支える腕を離し、その背中を向けるティファ。 「マリン、行こうぜ。ほら、クラウドもユフィも早く来いよ」 「待って、デンゼルー」 デンゼルがマリンの手を引き、テーブルへと向かう。 俺も続こうと、一歩足を踏み出した───その時。 「ちょっと待った!」 「…っ、なんだよ」 いきなり背後のユフィに腕を掴まれ、ぐいと引き寄せられた。 振り向きざま文句を言おうとしたその耳元に、音量を落としたユフィの声が届いた。 「(アンタもあるんでしょ、プレゼント。早く渡しちゃいなよ)」 「…!」 不意に言い当てられてドキリと心臓が鳴る。 だが。 「お前に関係ない」 それを隠しながら面白そうに口元を曲げる少女を目線だけで一瞥し、耳元の手を軽く掃った。 「余計な世話だ」 言われなくても後で渡すつもりだ。 ───ティファと二人きりになったらな。 そう心の中で一人ごちる。 途端、ユフィの目が細まり、腕を組んでじっとりと睨んできた。 腕に添えた指の一本で外へ続くドアを示す。 「ハン!そんな事言ってさあ。あそこにある花束、アレって明らかにティファへのプレゼントだよねえ」 「………」 ………気付かれていたのか。 再び大きく心臓が鳴るのを気合で圧し止め、動揺を隠す。 そんな俺に気付いているのかいないのか、ユフィの口は止まらない。 「あのままにしておいたらそのうち萎れちゃうんじゃないの?活きが良いうちに渡しちゃった方が良いと思いま~す!」 「………」 ………確かに。 食事の後、子供達が風呂に入っている間にでもと思っていたが……酒癖の悪いユフィのお蔭で、今日の晩餐は長引くだろう事は予想がつく。 いつも後先考えずベロンベロンになるまで呑みまくるコイツの事だ……その後の始末を俺やティファがする羽目になり、結果渡しそびれる可能性も………ゼロじゃない。 「それにさあ、ティファ、アンタから貰うのずっと待ってると思うんだよね~。変に落ち着かないって言うかさ、アタシがここに来てからだってソワソワしっぱなしだもん」 ユフィの指がカウンターの奥で準備をしているティファを指した。 沢山の調理用具に囲まれながら忙しそうに動いている。 その姿に、今朝子供達から言われた言葉が今しがたのユフィのそれと重なった。 『今日はクラウドとティファの"ケッコンキネンビ"なんだよ』 『ティファ、朝からソワソワしてるでしょ?クラウド、気付いてないの?』 「………、!」 不意にティファと視線が合った。 一瞬だけ眼を瞠り、けれどすぐに穏やかに細まる瞳。 それと同時に、ほんのりと頬が色付くのが分かった。 それからすぐに、少し早口になって娘の名を呼ぶ。 「マリン、悪いけどちょっと手伝ってくれる?」 「は~い!」 「オレも手伝う」 「ありがとうデンゼル。じゃ、これをテーブルに持って行ってくれる?」 「分かった。……あれ?ティファ、これソース付いてないよ」 「あっ、ごめんなさい!忘れてた!」 「ティファー、こっちもサラダ一個足りないよー」 「あっ、ちょっと待って!今用意するから…きゃっ!」 「ティファ、大丈夫?」 「ごめんごめん、ちょっと手が滑っちゃった」 「も~気を付けてね!」 一気にカウンターの動きが慌ただしくなる。 「………」 言われてみれば………何時になくティファの動きがそそっかしい気がする。 それは、やはり………。 (ティファ……期待してるのか……?) 頬が色付いたままの、いつもとは少し違う彼女をじっと見つめる。 「ほらね、言ったとおりでしょ?」 「……」 突っ立ったまま考えていると、いきなり背中をポンと突かれ、勢いで身体が反転した。 「っ、ユフィ…!?」 「アタシの事は全っ然気にしなくていーからさっ」 「は?何言って…おい!お前、止めろっ」 「いってらっしゃーい」 突然の事に抗議を上げるも無視されて、そのままグイグイと背中から押し出されるようにして無理矢理ドアへ送られる。 「クラウド?どうしたの?」 ドアの手前まで来た所で、俺達に気付いたティファが呼び止めた。 「もうすぐご飯出来るよ?」 「あ、いや…」 スープをよそうお玉を手に、きょとんとした顔で小首を傾げる。 すかさず背後のユフィが声を上げた。 「だいじょーぶよん♪忘れ物取りに行くだけだから気にしないでー」 「そう?冷めちゃわないうちに早く戻ってきてね」 「は~い」 「おいっ!」 そのままユフィに押し切られる形で外へと連れ出された。 入り口のドアを挟み、店の中からユフィが満面の笑みで手を振る。 「じゃ、準備出来たらさっさと戻って来るよーに!可愛い奥さんと一緒に待ってるよん♪」 「ちょ、待っ」 「じゃーねー」 勝手な事を言うやいなや、バタン!と勢いよく眼の前のドアが閉まった。 「………」 いきなり一人路地に取り残され、呆気にとられたまま立ち尽くす。 ───それから数秒。 「~~~アイツ…!」 次第にやり場のない怒りがふつふつと込み上げてきた。 「くそっ、後で覚えてろよ…!」 悪態を吐きながら舌を打ち、イライラとする心を抱えながら周りを見渡す。 まだ人通りの多い路地の片隅、店に隣接する小さなガレージが眼に入った。 「………」 もう一度辺りを見渡し、小さな溜息を吐いてやっと一歩を踏み出す。 向かった先、見慣れた愛機が静かに眠りについている。 その荷台には、括り付けられたままの彼女の花が夜風に微かに揺れていた。 保水剤のお蔭か、赤い花弁は生き生きとして、薄闇でも色濃く鮮やかにその存在を主張している。 まるで、自分の務めを果たすのを待っているかのように。 脳裏に、先程のユフィの言葉が過る。 『ティファ、アンタから貰うのずっと待ってると思うんだよね』 「………」 どうせなら、もっとスマートに事を運びたかったけれど……これも与えられたタイミングなのかもしれない。 明らかに面白がっているユフィの前で渡すのは不本意だが………。 仕方ない。 「……は」 気持ちを落ち着かせるように大きな溜め息を一つ吐き出し、足を踏み出す。 「緊張するな……」 数年前はあんなにすんなりと渡せた筈なのに。 上手く動かせない指先に一人自嘲しながら、荷台の紐をそっと解いた。 ………それからしばらくして。 「…よし」 花束を後ろ手に隠し持ち、意を決して再び店の中に入るや否や。 「おっそーい!!!!!クラウド、アンタなにチンタラしてんのさ~!!」 「…」 またしてもユフィの大声に出迎えられて、思い切り顔が引き攣りそうになりつつ何とか平静を装い扉を閉めた。 「悪かったな」 (一体誰の所為だと思っているんだ) 思わず一言言ってやりたくなるが……事情を知らないティファ達の手前、そこはぐっと我慢して飲み込むしかない。 気を取り直して奥のテーブルを見れば、既に夕食の準備はすっかり整えられていて、ティファや子供達もそれぞれの席に落ち着いていた。 出来るだけ花束の存在を気取られないよう、慎重に足を進める。 テーブルの前まで来た時、手前の椅子に掛けていたユフィがワザとらしく厭らしい視線を投げてきた。 「緊張で腹痛でも起こしちゃったかな~??んん~??」 「……(絶対後で〆る)」 「~♪(やれるモンならやってみれば?)」 間違いなく面白がっているユフィに意地でも表情は変えずに視線で応戦していると、テーブルを挟んで向こう側に座るティファが不思議そうに首を傾げた。 「二人とも、どうしたの?」 「大丈夫だ。気にしないでくれ」 「そうそう、気にしない気にしない~♪」 「??」 俺とユフィの顔を交互に見ながら疑問符を浮かべるティファに、今度は待ちくだびれた子供達も声を上げ始める。 「ティファ~早くご飯にしよう?マリン、おなかすいちゃった」 「オレも~」 「う、うん。ごめんねマリン、デンゼル。クラウド、早く座って頂戴。せっかくのお料理が冷めちゃうわ」 「……」 ティファの言葉に、ユフィは勝ち誇った表情を浮かべ、俺は渋々この戦いに終止符を打つ事にした。 隠し持つ花束をどうしようかと一瞬迷ったが、少なくとも今渡すタイミングではなさそうだ。 ティファ達に気付かれないように、椅子を引くと共に花束をテーブルの下へそっと置いて様子を見る事にした。 ………続きます……… |
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